旅のはじまり・・・
その話が出たのは、そう…たしか…5月のある夕方
珍しく早く帰宅した主人と家族揃っての夕食を終え、洗い物をしている時でした。

たった一言、「サンパウロに行くよ」…… とてもさりげなく告げられました!

身体中の血が逆流するかと思うほどの衝撃でしたが、主人のさりげない態度にさりげなく振舞いたかった私は・・・
洗い物の手を休めることなく視線を流しに向けたまま

「サンパウロって、ブラジルの…?」


何故でしょう…?

その夜の光景がやけに鮮明に記憶に残っています。
その日から 慌しい家族大移動の準備が始まりました...

ブラジルの事、サンパウロの事、そして 子供達の学校の事など、調べる事は山ほどあります。

その年の9月末、主人だけが先行赴任。

残された私は、会社での夫人研修に始まり、子供達を連れて健康診断やらパスポート取得やら、警視庁での無犯罪証明やら、
事務的な手続きに追われていました。
次男は当時4才。パスポートの受け取りに行っても、自分のサインがなかなか書けず、大変な思いをした事も今では懐かしいお話です。

海外生活への不安が日増しに大きくなっていくのですが、子供たちの気持ちを思うと、私の不安など心の隅っこに押しやるしかありません…


昭和天皇が逝去され、元号が平成と改められたその年は、くしくも 私達家族の未知への出発の年となりました。


1989年3月18日、実家の両親に見送られ、成田を後に・・・
三人三様の不安と期待がいっぱい詰まった、

5年間の長〜い旅がはじまりました・・・・・

10/12/2002