カレンダーをめくりながら




長く住み慣れた土地を離れここへやって来て、もう１年と半年になろうとしている。

少しばかりの退屈と少しばかりの孤独を感じながら、何もないこの小さな町で暮らしている。


時々 せわしなく行き交う人の群れが恋しくなって、電車に揺られ都会に出る。

見慣れた景色や雑踏や懐かしい街の風を両手いっぱいに抱え、海音の聞こえる我が家へ帰る。

そんなことを繰り返して、一年半が過ぎて行く。


春になれば、川沿いの桜を眺めながら散歩を楽しみ…

夏が来ると、賑やかな祭りに人が集まり、海上では打ち上げ花火が喝采を浴びる。

秋・・・　山は赤く染まり、みかん畑が活気づく。

冬には、湯気で煙る温泉がいい。冷たくかじかんだ身体がゆっくりとほぐれていく。



カレンダーをめくりながら、そうやって過ごしてきた。

そしてまた 春が巡る・・・


光る海と遠くの釣り船を眺めていたら、

静かな波の音に誘われるように、海鳥たちがやって来た。

遊び疲れたら、彼らはどこへ帰るのだろう・・・

by neusa...2015/12/10